支払期日未到来の売掛債権を買い取ってもらい、現金の融通が受けられるファクタリングを利用する企業や個人事業主も増えてきました。
とはいえ「思ったより審査に時間がかかった」「即日支払と言っていたのに3日もかかった」など、今利用しているファクタリング業者に不満を持っている方も多いはずです。
ファクタリング業者も複数あるので、もっと良いファクタリング業者を見つけて利用してみたいと思うこともあるかもしれません。
しかし「他社利用中でも、別のファクタリング業者を利用することはできるのか」は疑問に思うものです。
今回は、一度に複数のファクタリング業者を利用できるのか、その疑問を解消するとともに、他社利用中に別のファクタリング業者を利用するメリットやデメリット、注意点などを解説します。
■同一の売掛債権でなければOK
銀行融資の場合、融資を受ける事業者の返済能力の大きさにより、同じ銀行でもそれ以上借りられなくなることがあります。
他の銀行で借りたくても「もうすでに借り過ぎているから貸せない」と言われることは少なくありません。
貸金業者の場合には「年収の3分の1まで」という総量規制があるため、個人事業主が複数の貸金業者から借りようとしても、上限に達すると借りられなくなります。
では、ファクタリング業者を利用する場合、一度に複数のファクタリング業者を利用することはできるのでしょうか。
結論から言うと、基本的には他社利用中でも同一の売掛債権でなければ利用することは可能です。
ファクタリングでは、利用する事業者の信用力よりも、売掛債権の支払手である売掛先の支払い能力のほうが基本的に重要です。
そのため、他社利用中でも、優良な売掛債権であれば問題なく買い取ってもらえます。
ただし、同一の売掛債権を二重譲渡するような行為は法律的に認められず、詐欺や不正行為となるので気を付けましょう。
売掛債権が複数あり、現在利用しているファクタリング業者よりも「条件が有利そう」「よりスピーディーに対応してくれそう」などのメリットを感じるなら、別のファクタリング業者に申し込むのもありです。
■他社利用中に別のファクタリング業者を利用するメリット
ファクタリング業者と言っても、複数の業者が存在しています。
ファクタリングの需要が高まっていることもあり、新しいファクタリング業者の参入も続いています。
なかには実績が浅く、専門性も低いファクタリング業者もあるので注意も必要ですが、大手企業のグループ会社であったり、コンサルティングサービスが充実したファクタリング業者もあったりするので、他社利用中でも別のファクタリング業者を利用したくなることもあるでしょう。
ここでは、他社利用中に別のファクタリング業者を利用するメリットについて解説します。
・よりニーズに合ったファクタリング業者との出会いが期待できる
他社利用中に別のファクタリング業者を利用するメリットのひとつは、よりニーズに合ったファクタリング業者との出会いが期待できることです。
現在利用しているファクタリング業者は、よく調査し、慎重に考えたうえで選んだものでない可能性があります。
とくに初めて利用する場合は、ファクタリングの仕組み自体をよく理解していなかったり、資金繰りで困っていたりすることが多いものです。
これらの背景から、とりあえずネットで検索して最初に見つけたファクタリング業者に申し込んでしまうようなケースもあるかもしれません。
そのときは手数料も低く、即日対応できるという案内を見て利用したものの、実際にはそうではなかったり、他のファクタリング業者のほうがより良い条件を出していたのに気づけなかったりといったこともあるでしょう。
一度、ファクタリングを利用してみて、どんなシステムか把握したところでニーズを洗い出し、それに合ったファクタリング業者がないか探せば、より満足のいくファクタリング業者との出会いが期待できます。
・審査が早くなる
ファクタリング業者によって審査スピードは異なり、場合によっては今より簡易な審査で、より速く現金を手に入れられる可能性があります。
他社利用中に今すぐ資金ニーズが生じたものの、今のファクタリング業者は振込スピードが遅いと感じているなら、試してみるのもありです。
・審査に他社利用中の履歴が活用されることもある
新たなファクタリング業者を利用する際に、他社利用中であることを申し出た場合、どうなるでしょうか。
不利になるかもしれないと隠す方がいますが、逆に利用実績を確認してもらうことで、審査スピードが上がったり、より有利な条件で買取に応じたりしてもらえることもあります。
たとえば、他社利用中でも約束どおり、売掛債権の支払期日到来時にファクタリング業者に送金しているなどです。
その実績が何度もあれば、ファクタリング利用者も売掛先も優良だと判断され、信頼が高まり、よりスピーディーかつ高額な買取をしてもらえるかもしれません。
・限度額がより高額になる
ファクタリング業者によって、買取の限度額が異なります。
買取できる売掛債権の下限・上限が設けられている場合がほとんどです。
たとえば、現在利用しているファクタリング業者は5,000万円までが上限だけれど、1億円のファクタリングをしてほしい場合、上限額が1億円や2億円といったファクタリング業者に申し込むことで、より高額なファクタリングができるようになります。
・手数料率が下がることがある
ファクタリング業者によって、手数料率や手数料の決め方も異なります。
もし、最初のファクタリング業者を決める際に、手数料などをよく確認せずに選んでしまい、手数料控除後の手取り額が少ないと不満を感じているなら、手数料が安いと評判の高いファクタリング業者に申し込むことで、より有利な条件で借りられる可能性もあるかもしれません。
この点、一般的には同じファクタリング業者を利用する場合、トラブルなく利用することで信頼が増し、次第に手数料率が下がっていくメリットがあります。
そのため、同じファクタリング業者を利用し続けたほうが有利な側面もありますが、ファクタリング業者のなかには他社利用中の実績も含めて、手数料に反映してくれるケースも見られます。
つまり、初めての利用でも、他社利用中で問題なくファクタリングの返金ができているなどの実績が評価されれば、手数料を低くしてくれることもあるのです。
■他社利用中に別のファクタリング業者を利用するデメリット
他社利用中に別のファクタリング業者を利用するメリットは多くありますが、それなりのデメリットもあります。
・リピート利用による手数料低下のメリットが受けにくくなる
ファクタリングは1回利用して終わりというケースもありますが、一度利用すると仕組みがより分かって安心できます。
また、銀行融資を申し込むより簡便で、必要な金額だけをスピーディーに受け取れるので、必要に応じて何度も利用する事業者も増えてきます。
とくに売掛債権を持っている事業者は、あらゆる取引先と掛売取引を締結しているケースが多く、複数の売掛債権が継続的に発生するので、その活用をしたいと思うでしょう。
では、売掛債権を現金化するたびに、毎回異なるファクタリング業者を利用しても問題ないのでしょうか。
結論的に、同じ売掛債権を対象にしない限りは問題ありません。
しかし、ファクタリングの条件を有利にし、より売掛債権の手取り金額を増やしたいなら、一般的には同じファクタリング業者をリピート利用していくほうが有利になります。
なぜかと言うと、ファクタリングを利用して、支払期日が到来した際に問題なくファクタリング事業者に支払いができれば、優良な利用者だという実績が認められるからです。
次回の利用時には、その実績も踏まえて審査してもらえるので、優良な実績を重ねるほど、手数料率の低下が期待できます。
そのため、毎回別のファクタリング業者を利用したり、他社利用中に簡単に別のファクタリング業者に乗り換えてしまったりすると、リピート利用による手数料低下の恩恵を受けにくくなってしまう可能性があります。
・ファクタリングを利用した売掛債権の管理が複雑になる
他社利用中に別のファクタリング業者も利用して、複数の売掛債権を一度にファクタリングに出した状態になると、その管理が複雑になるおそれがあります。
二者間ファクタリングの場合は、支払期日が到来したら、売掛先から受け取った代金をファクタリング業者に送金する必要があります。
一方、三者間ファクタリングの場合は、売掛先に請求してはいけない決まりです。
この管理を徹底していかないと、ファクタリングの約束が履行できず、マイナス評価の実績がつくこともあるので気を付けましょう。
■他社利用中の注意点
他社利用中に別のファクタリング業者も利用したい場合は、とくに以下の点に気を付けましょう。
・二重譲渡に注意
他社でファクタリングした同じ売掛債権を、別のファクタリング業者にも買い取ってもらうことは認められません。
二重譲渡になり、民法上の不法行為に問われるほか、同じ売掛債権で複数のファクタリング業者から現金を得ることがあれば、詐欺罪に問われるおそれもあります。
「知らなかった」などの理由では済まされない可能性があるので、細心の注意を払わなければなりません。
仮にうっかりでも、二重譲渡すれば、支払期日に困ったことになります。
たとえば、A社に対する売掛債権100万円分を2つのファクタリング業者に買い取ってもらった場合、どうなるでしょうか。
売掛先からは100万円しか支払われないのに、2つのファクタリング業者に送金する義務を負うので、100万円足りなくなります。
後日、二重譲渡であったことが発覚すれば、2つのファクタリング業者ともに、利用者の評価が下げられ、悪質な利用者として二度と利用できなくなることもあるので注意が必要です。
・支払期日や支払先に注意
同一の売掛債権でなく、複数のファクタリング業者で、さまざまな売掛債権を買い取ってもらう際も注意が必要です。
二者間ファクタリングの場合は、支払期日が到来して売掛先から代金の支払いを受けたら、ファクタリング業者にすぐに送金することが求められます。
たとえば、Aのファクタリング業者に送金すべきところをBのファクタリング業者に送金してしまうことや、支払期日が到来して入金されたのに、ファクタリング未利用の債権と間違えて、送金しないなどのミスがないよう気を付けましょう。
■まとめ
他社利用中でも、同一の売掛債権でなければ別のファクタリング業者を利用することは可能です。
他社利用中に別のファクタリング業者を利用するメリットとして、よりニーズに合ったファクタリング業者との出会いが期待できること、他社利用中のファクタリング利用実績を活かしてもらうことで審査が早くなること、より限度額が高額なファクタリング業者を利用できること、手数料率が下がることがあることが挙げられます。
一方、他社利用中に別のファクタリング業者を利用するデメリットとしては、リピート利用による手数料低下のメリットが受けにくくなること、ファクタリングを利用した売掛債権の管理が複雑になることが挙げられます。
他社利用中の注意点として、二重譲渡をすることがないようにしましょう。
また、二者間ファクタリングの場合には支払期日の到来を忘れないように管理するとともに、どのファクタリング業者に支払うのか、支払先に注意が必要です。
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