製造業では納品して代金支払いを受けるまでの段階で、原材料の仕入れや人件費、製造のための光熱費や輸送費などの支払いが生じるのが基本です。
商品代金も、1か月まとめての請求や後払いなど売掛金が多い一方、運転資金や製造機械などの設備投資が必要になるため、手元資金が不足しやすいのが実情です。
そこで、ファクタリングを利用することにより、資金繰りを改善したり、事業拡大や設備更新のための整備投資がしやすくなったりします。
この記事では、製造業における資金の必要性や課題、製造業でファクタリングを利用するメリットや注意点、ファクタリング業者の選び方をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。

■製造業における代金回収の実情

製造業では、受注生産で製造前に代金の支払いを受けるようにしているケースを除けば、一般的に納品時の支払いか、納品後の後払いになります。
つまり、製造にあたって必要となる原材料の仕入れ代金や製造スタッフの人件費、工場を動かすための光熱費や機械、設備・器具などの更新費用やメンテナンス費用、完成した製品の輸送費などを、代金を受け取る前に負担しなくてはなりません。
そのため、製造業を始めるには多額の設備投資や開業資金も必要になるほか、稼働後も常に運転資金を確保しておくことが必要です。
都度納品などの場合は納品時に支払ってもらえることもありますが、BtoB取引の場合ですと、後日振込払いになることも多いです。
継続的な取引や定期的な取引になると、1か月分まとめて請求したうえで翌月払いとなり、売掛金が多いのも製造業の特徴といえます。

■原材料費の仕入れと値上がり

製造業では、製品を作って売る前に原材料を仕入れなくてはなりません。
原材料などのコストを踏まえて製品価格を決めても、原材料費が大きく値上がりすると利益が減るなど、経営を圧迫することもあります。
また、売れ筋製品であったり、一気に人気が上がったりして製造量を増やしたい場合でも、原材料費の値上がりは大きな痛手です。

■人件費の支払い

製造業では工場で製造に従事してもらうスタッフをはじめ、営業職や事務職、検品や梱包スタッフ、配送ドライバーなど多くの人手が必要です。
一部、オートメーション化が進んでいる工場もありますが、人材は重要なので毎月の給与支払いを遅らせるわけにもいきません。

■高額なエネルギーコストと値上がり

製造工場では灯油をはじめ、電気やガス、水など大量のエネルギー源を使います。
固定費として発生するものですが、石油が電気、ガスなどの値上がりがおこなわれると、使用量も大きいだけにコスト増加につながります。
光熱費などの支払いは買掛金にすることも難しいので、コスト増加は大きな負担です。

■設備・機器の更新やメンテナンス

工場では多くの設備や機械、機器や道具などを使っています。
日々の清掃や点検、メンテナンスにかかるコストをはじめ、古くなったり、故障したりした場合には買い替える費用も必要です。

■設備投資

工場のオートメーション化を図ったり、事業を拡大するために新しい工場を作ったり、新たな機械などを導入したりするには設備投資も欠かせません。
設備投資するためには、事業計画を作成して、銀行などの金融機関に融資申請をしたうえで、現場の訪問を受けるなど手間もかかります。
審査に時間がかかったり、工場や機械などに担保設定が必要になったりするなど、簡単には融資が受けられないのもネックです。

■値上がり分などを製品価格へすぐに上乗せしにくい

原材料のコストやエネルギーコストが値上がりして増えたとしても、すぐに製品価格に上乗せできないのも課題です。
頻繁に製品価格を変更するのも難しいほか、パッケージに価格が表示されていれば、それも変更しなくてはならないので大きな手間となります。
わずかな値上がりでも買い控えが起こる場合もあるので、値上げを躊躇する製造業者も少なくありません。
一方で、売掛金をすぐに回収できない状況で、仕入れコストやエネルギーコストが増大し続ければ、現金が不足するなど、経営にも負担がかかります。

【ファクタリングのすすめ】

ファクタリングをすると、ファクタリング業者が、支払期限がいまだ到来していない売掛債権を買い取ってくれます。
手数料を控除したうえで買取代金をすぐに支払ってくれるので、今すぐ現金がほしいときなどに便利です。
「商品がヒットして製造するための原材料の仕入れを増やしたい」「急に製造設備や機器が壊れたので買い替えたい」「光熱費や燃料費の高騰で困っている」「人手を増やすために資金を用立てたい」などのニーズに素早く対応できます。
銀行融資と異なり、製造業者の支払い能力は関係ありません。
取引先が支払う売掛債権が買取対象になるためです。
そのため、すでに金融機関の融資の枠を使い切っていたり、新たな融資の取り付けが難しかったりする場合にも、速やかに資金調達ができるのもメリットです。

■ファクタリングの種類

ファクタリングには大きく2種類の方法があります。
1つはファクタリング業者と製造業者のみで債権の売買をする二者間ファクタリング、もう1つはファクタリング業者と製造業者、売掛債権を有している製造業者の取引先と契約を結ぶ三者間ファクタリングです。
三者間ファクタリングでは、取引先の合意が必要となり、ファクタリング契約を締結してもらわなくてはなりません。
また、売掛金の債権回収は、ファクタリング業者から取引先に直接なされます。
そのため、取引先にファクタリングをすることがバレるだけでなく、合意してもらえないおそれもあります。
一方、二者間ファクタリングなら、取引先には無関係でおこなえるので、契約手続きも素早くでき、現金化されるまでのスピードも速いです。

1.二者間ファクタリングの利点と注意点

二者間ファクタリングは、製造業者とファクタリング業者のみで契約締結ができます。
契約が整いしだい振り込んでもらえるので、現金化のスピードも速いです。
そのため、すぐにでも現金を手に入れたい場合に便利です。
ファクタリング業者は買い取った売掛金から手数料分を差し引いたうえで、振込をしてくれます。
では、現金化した売掛金はどうやって回収されるのでしょうか。
二者間ファクタリングでは取引先を巻き込まずに契約して現金化ができる分、製造業者と取引先の売買契約はそのまま残されています。
取引先の同意もなく、通知もなされていないので、売掛債権はファクタリング業者には移転しておらず、売掛金の請求権は残っている状態です。
そのため、売掛債権の支払期日が到来したら、いつもどおりに請求をおこない、支払いをしなくてはなりません。
その後、ファクタリング業者にその代金を返済する必要がありますので、プレッシャーも残ります。
万が一、返済が受けられなかったり、遅延されたりしてしまうと、自腹でファクタリング業者に支払わなければなりません。
ファクタリング業者としては、契約した製造業者とその取引先の倒産リスクや代金不回収となるリスクも背負っているため、三者間ファクタリングに比べて手数料率が高くなっています。
つまり、二者間ファクタリングは三者間ファクタリングに比べて手数料が高くなり、手取りが少なくなる点、後日、代金回収をしたうえでファクタリング業者に返済する必要が生じる点に注意しましょう。

2.三者間ファクタリングの注意点と利点

三者間ファクタリングは、取引先の合意と三社による契約が必要です。
そのため、取引先の合意が得られず、ファクタリングが実現できないおそれもあります。
また、ファクタリングの必要性や事情を説明したり、合意してもらえるよう交渉をしたりと、三社で契約を結ぶ手続きをする手間もかかり、現金化までに時間がかかるのもデメリットです。
取引先企業の合意を得なくてはならないため、取引先が製造業者の資金繰りや経営状態などに不安を感じたり、不信感を抱いたりするケースも少なくありません。
これまで代金回収で遅滞などトラブルが生じたことがない優良な取引先ほど、製造業者が倒産して納品されなくなることをおそれ、継続取引の停止を求められたり、他の製造業者に乗り替えられたりするリスクも発生するので注意しましょう。
とくに取引先が地元の企業に集中している場合などでは「ファクタリングを打診された」「経営状態がマズいらしい」などと悪い噂を拡散されてしまい、取引が減少したり、新規取引を得にくくなったりするリスクもあります。
一方、代金の支払い遅延があったなど支払い能力が低い取引先の場合には、代金支払いで融通が利く長年の付き合いがある製造業者から、代金回収のプロフェッショナルであるファクタリング業者に売掛債権が移転することを嫌がるケースが見られます。
代金の督促や取り立てが厳しくなると不安になり、三者間ファクタリングに合意してくれないケースも多いです。
そのため、製造業にとっては三者間ファクタリングより、二者間ファクタリングのほうが、より安心して利用できます。
ただし、三者間ファクタリングは二者間ファクタリングより手数料が安いので、前払いしてもらえる手取り額はより多くなるメリットがあります。
また、売掛金をファクタリング業者に現金化してもらった後、取引先からの代金回収もファクタリング業者に任せられるのがメリットです。
請求の手間が省けるだけでなく、万が一の取引先倒産や経営悪化による代金が回収できなくなるリスクを抑えられます。

■ファクタリング業者の選び方

製造業者がファクタリング業者を選ぶ際にとくにチェックしたいのは、手数料率と対応力、信頼性の高さと実績です。
手数料分を買取代金から差し引かれるので、手数料が高いほど手取りが少なくなります。
売掛金を少しでも多く手元資金として早い段階で活用したい場合には、手数料率は低いほうがベストです。
ファクタリングの申し込みをして契約を締結してから、入金までのスピードが速いかなど対応力もチェックしましょう。
製造業者や他業種の利用者も含め相談にしっかり応じてくれる、対応力や現金化スピードに定評があるなど、信頼と実績が高いファクタリング業者を選ぶと安心です。

◎まとめ◎

製造業では設備投資をはじめ、納品をして代金を回収するまでの間に原材料の仕入れや人件費、光熱費や輸送費などの支払いをする必要があります。
一方で、代金が売掛金となることが多いため、資金繰りが悪化することも少なくありません。
そこで、ファクタリングを利用することで売掛金を素早く現金化でき、製造をスムーズにおこなったり、機械設備の更新や事業拡大のための設備投資もしやすくなったりします。
二者間ファクタリングは三者間ファクタリングに比べて手数料が高くなり、後日、代金回収をしたうえでファクタリング業者に返済する手間はかかるものの、取引先に知られずにおこなえるのがメリットです。
三者間ファクタリングでは取引先企業の合意を取り付ける必要がありますが、その際に製造業者の資金力に不安を感じた取引先が、取引の継続を停止したり、他の製造業者に乗り換えたりするリスクも生じますので気を付けましょう。
製造業者がファクタリング業者を選ぶ際は、手数料率や現金化できるスピード、信頼性などを比較して選ぶのがおすすめです。